公益財団法人 がん集学的治療研究財団

あゆみと活動

発展の経緯

1)第1期(1980〜1990)−黎明期

財団法人がん集学的治療研究財団の発展の経緯は3期に分けられます。設立以来約10年間は、データ解析システムの確立に時間を費やすことになり、現行の解析システムがほぼ1990年ごろにつくられました。これまでを第1期とします。第1期において約18の多施設共同研究(特定研究)が実施されました。

JFMC01-8101(特定研究1)(1986〜88、胃がん手術の補助免疫化学療法)は実に7,600例を越す症例を集積し、整備されたデータ・センターにてその解析が1990年ごろ行われ、1992年に研究報告書をまとめました。そしてそこで気付いたことは、症例数だけは多いがデータの質は決して高くないということです。これは財団法人がん集学的治療研究財団のJFMC01-8101(特定研究1)だけのことではなく、当時の全国一般の傾向でしたが、このような状態のままで共同研究をいくら重ねても将来性は期待できないと自省し、質を高めるための方策の模索に没頭しました。ICHやGCPの討議で国が本腰になる以前のことでした。

2)第2期(1991〜1999)

(1) 高質の臨床試験実施機関、 QOT (Qualified Organization for Trial) をめざしてProject Coordinating System (P.C.S.) の確立へ

データの質は参加施設の熱意に懸っており、とくに担当医によってばらつきが激しいことをつきとめましたが、問題はそれに対する具体策です。わが国の医学教育では「研究室医学」に重点がおかれていましたので、多施設共同研究の重要性に対する認識に欠けるという基本的問題があることから掘り起さなければなりませんでした。対策の結論はプロジェクトごとにP.C.S.を確立することでした。これは、研究事務局と参加施設に夫々施設スーパーヴァイジング・ドクターと施設データマネージャーをおき、定期的にファックスによる交信を行い、リアルタイムにデータの集積状況が把握できるようにするもので、ケース・カードの提出と平行して、それの裏付けの資料をつくるものです。これは同時に実質的に内部査察(Inner audit)の機能をも兼ねることとなります。

1993年からP.C.S.を財団法人がん集学的治療研究財団の特定研究に導入し、また1996年から担当医を支援する施設データマネージャーが活動し始めましたが、データの質は飛躍的に向上し、当初の期待はここに証明されました。

(2) 第2期における主な研究テーマ <シスプラチン・5-FU>併用療法の評価

  1. <大量シスプラチン・5-FU>併用療法(大量FP療法)の第V相試験(JFMC20-9301(特定研究20):高度進行胃癌に対するCDDP・5-FU併用による強化療法に関する研究(1993.11〜1996.3))中間解析(1998年5月)の結果、<大量FP療法>は有効性・安全性の面から優越性を期待させるものはありません。


  2. <少量シスプラチン・5-FU>併用療法(少量FP療法)の第V相試験(JFMC23-9602(特定研究23):高度進行胃癌に対するlow dose CDDP・5-FU術後投与の有用性に関する研究(1996.5〜2000.3))中間解析(2001年11月)において,<少量FP療法>は有効性が示唆される結果が得られました。


  3. <少量FP療法>に関する全国アンケート
    1. 低用量CDDP・5-FU療法の現況について―全国アンケートを中心として
      佐治重豊他、癌と化学療法、vol.24、1892〜1900、1997
      79施設(847例)、少量FP療法の消化管腫瘍に対する効果は35-50%、有害事象は従来のものより軽微です。
    2. 固形腫瘍に対する少量CDDP+5-FU療法の現況(第2報)―特に有害事象についての全国アンケートから
      峠哲哉他、癌と化学療法、vol.27、549〜558、2000
      CDDP 3mg/u・5-FU 300mg/u, 5投2休/週4回の反覆が<少量FP>の長期投与法として有望です。

3)第3期(2000〜) −QOT による自主的研究としての臨床試験の推進

  1. JFMC27-9902(特定研究27):切除不能、再発進行胃がんに対する少量シスプラチン+TS-1療法(第T/U相試験)
    • <趣旨> 本試験は新しい治療法の開発を企図したものではなく、むしろ、新しい治療薬として登場したTS-1について、不適切な少量シスプラチン併用が不測の事故を起こすことを未然に防止するための「危機管理」のためのもので、それを調べるために計画された臨床試験です。かつて、1993年、ソリブジンとフルオロウラシル系薬剤によって起こった重篤な副作用事故の教訓に鑑み、TS-1においてそのような事故を未然に防止するという意味のものです。このような対応は財団法人がん集学的治療研究財団の重要な使命と考えます。

  2. JFMC28-0001(特定研究28):切除不能大腸癌肝転移に対する肝動注化学療法(WHF療法)の有効性に関する研究(第U相試験)


  3. JFMC29-0003(特定研究29):大腸癌肝転移に対する肝切除後の動注化学療法(WHF療法)の有効性に関する研究(第V相試験)
    • <趣旨>大腸癌肝転移に対する肝動注療法は欧米においては否定的な評価となっています。しかし最近の経皮的埋没型カテーテル留置法の普及と、病巣部への選択性の高い動注技術の開発に特色を有する本邦においてこれの再評価を行い、本法の優位性を国際的に示すことはわが国の癌治療開発のためにとくに重要と考えられます。

  4. JFMC30-0002(特定研究30):大腸癌に対する<少量シスプラチン・5-FU>療法の5-FU持続静注を対照としたランダム化比較試験
    • <趣旨>シスプラチンは単剤では大腸癌に有効性を示さないため、大腸癌に対して適応は認可されていませんが、5-FUとの併用においてその効果が広く認められています。保険取扱いがなされないためにその効果を立証する臨床試験が実施できず、臨床上大きな問題となっています。
      井口理事長(当時)は論説「抗癌化学療法の臨床研究の諸問題に思う」(医学のあゆみ、188巻、752〜759、1999.2.13)を発表しました。プロトコールの作成に当っては、厚生省通達「適応外使用に係わる医療用医薬品の取扱いについて」(1999.2.1)に配慮しました。